埼玉県で亡くなった人の数のうち、相続税申告が必要となったケース、さらには相続税納付が必要になったケースは、どのくらいの割合だったのでしょうか。
官公庁が公表している令和元年(2019年)分のデータを基礎にして独自に調査分析してみました。
埼玉県の状況
1年間に埼玉県で亡くなった人の数については、埼玉県(埼玉県保健医療部保健医療政策課)が、市町村単位の内訳が分かる形で公表しています。
埼玉県における相続税申告書の提出件数や相続税納付の件数については、国税庁の関東信越国税局が、税務署所轄地域単位の内訳が分かる形で公表しています。
そこで、前者を分母、後者を分子として組み合わせることで、埼玉県内の税務署所轄地域ごとの「申告割合」「課税割合」を算出してみました。
令和元年(2019年)分の結果は次のとおりです。
税務署 | 所轄 | 被相続人数=死亡者数 (A) | 相続税申告書の提出に係る被相続人数 (B) | うち相続税額があるもの (C) | 申告 割合 (B/A) | 課税 割合 (C/A) |
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川越 | 川越市、富士見市、坂戸市、鶴ケ島市、日高市、ふじみ野市、入間郡 | 8,493人 | 1,127人 | 872人 | 13.3% | 10.3% |
熊谷 | 熊谷市、深谷市、大里郡 | 4,251人 | 430人 | 351人 | 10.1% | 8.3% |
川口、西川口 | 草加市、川口市、蕨市、戸田市 | 9,200人 | 1,274人 | 951人 | 13.8% | 10.3% |
浦和 | さいたま市中央区・桜区・浦和区・南区・緑区 | 5,143人 | 1,050人 | 752人 | 20.4% | 14.6% |
大宮 | さいたま市西区・北区・大宮区・見沼区 | 4,760人 | 884人 | 634人 | 18.6% | 13.3% |
行田 | 行田市、加須市、羽生市 | 2,875人 | 266人 | 224人 | 9.3% | 7.8% |
秩父 | 秩父市、秩父郡 | 1,488人 | 101人 | 88人 | 6.8% | 5.9% |
所沢 | 所沢市、飯能市、狭山市、入間市 | 6,945人 | 958人 | 749人 | 13.8% | 10.8% |
本庄 | 本庄市、児玉郡 | 1,721人 | 136人 | 112人 | 7.9% | 6.5% |
東松山 | 東松山市、比企郡 | 2,565人 | 252人 | 193人 | 9.8% | 7.5% |
春日部 | さいたま市岩槻区、春日部市、久喜市、蓮田市、幸手市、白岡市、杉戸町、南埼玉郡 | 7,714人 | 867人 | 672人 | 11.2% | 8.7% |
上尾 | 鴻巣市、上尾市、桶川市、北本市、伊奈町 | 5,062人 | 666人 | 519人 | 13.2% | 10.3% |
越谷 | 越谷市、八潮市、三郷市、吉川市、松伏町 | 5,785人 | 634人 | 491人 | 11.0% | 8.5% |
朝霞 | 朝霞市、志木市、和光市、新座市 | 3,535人 | 568人 | 426人 | 16.1% | 12.1% |
計 | 埼玉県 | 69,537人 | 9,213人 | 7,034人 | 13.2% | 10.1% |
全国平均との比較
国税庁発表資料によると、同年の日本全国でみた相続税の申告割合は10.7%(=147,801/1,381,093)、課税割合は8.4%(=115,267/1,381,093)です。
埼玉県は全国平均よりもやや高いと言えそうです。
分析
埼玉県のなかで申告割合・課税割合ともに最も高いのは、浦和税務署管内です。全国平均の約2倍の割合です。さすがは県庁を擁する埼玉の中心地です。
これに、大宮税務署管内、朝霞税務署管内が続きます。
相続税の申告割合および課税割合に最も影響を及ぼす要因は地価だと考えられます。
東京23区にアクセスしやすい埼玉県南部は地価が高くなりやすく、そうした地域ほど相続税の申告割合・課税割合が高くなる傾向があることが見てとれるかと思います。
しかし単純に地価だけでは説明しきれない面もあります。例えば、埼玉県のなかで地価が桁違いに突出して高いのはJR大宮駅の西口駅前なのですが、大宮税務署管内の申告割合・課税割合が突出して高くなっているわけではありません。それぞれの地域によって、地主層の形成過程や移住者の傾向などに相違点があり、様々な要素が複雑に影響を及ぼしているものと考えられます。