埼玉県における相続税の申告割合・課税割合(平成30年分)

相続税

埼玉県のなかで相続税の申告や納付が必要となる人はどのくらいの割合でいるのでしょうか。

「埼玉県は全国平均と比べて高いのか低いのか?」「埼玉県内の地域ごとの内訳はどうなっているのか?」こうした素朴な疑問を晴らすべく、官公庁の公表しているデータを基礎に、平成30年(2018年)分について独自に調査分析してみました。

日本全体の状況

埼玉の話に入る前に、いったん日本全体の状況についてみてみましょう。

日本における相続税の状況について、国税庁が統計年報として毎年定期的に公表しています。この記事を書いている時点での最新版は平成30年(2018年)分のものです。そこから数値を引用すると次のとおりです。

被相続人数
(死亡者数)
相続税申告書の提出に係る被相続人数 うち相続税額があるもの 申告割合 課税割合
1,362,470人 149,481人 116,341人 11.0% 8.5%

1年間に亡くなった方1,362,470人の相続につき、うち149,481件に相続税申告があり、116,341件に相続税の納付があったということです。これを割合でいうと、申告があった割合は149,481÷1,362,470=11.0%で、課税があった割合は116,341÷1,362,470=8.5%ということです。

ここから得られるイメージとしては、10人に1人くらいが相続税に関係している、ということであり、さらにこれを逆に言うと、相続税は9割の人には関係がない、ということにもなります。

なお、課税割合が申告割合よりもやや少ないのは、相続税には「小規模宅地等の特例」や「配偶者に対する相続税額の軽減」などの相続税申告をしなければ適用できない制度があり、これらを適用して相続税申告をして納付すべき相続税額がゼロになる場合などがあるためです。

国税局の所轄地域ごとの状況

上記は日本全国を対象とした数値であり、地域ごとに見れば偏りがあります。

国内12のブロックごとにそれぞれ国税局が設置されていますが、これら国税局でも所轄地域ごとの相続税の状況について国税庁と同じような統計年報を発表しています。各国税局の平成30年分の発表を一覧にまとめると、次のとおりです。

国税局 地域

被相続人数(死亡者数)

相続税申告書の提出に係る被相続人数 うち相続税額があるもの 申告
割合

課税
割合

札幌国税局 北海道 64,187人 3,318人 2,734人 5.2% 4.3%
仙台国税局 青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島 115,347人 6,029人 4,854人 5.2% 4.2%
関東信越国税局 茨城、栃木、群馬、埼玉、新潟、長野 200,965人 19,743人 15,707人 9.8% 7.8%
東京国税局 千葉、東京、神奈川、山梨 271,066人 50,254人 36,782人 18.5% 13.6%
金沢国税局 富山、石川、福井 35,010人 3,071人 2,589人 8.8% 7.4%
名古屋国税局 岐阜、静岡、愛知、三重 154,767人 21,802人 17,480人 14.1% 11.3%
大阪国税局 滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山 214,582人 23,982人 19,021人 11.2% 8.9%
広島国税局 鳥取、島根、岡山、広島、山口 89,644人 7,549人 6,068人 8.4% 6.8%
高松国税局 徳島、香川、愛媛、高知 50,638人 4,134人 3,388人 8.2% 6.7%
福岡国税局 福岡、佐賀、長崎 81,135人 5,171人 4,134人 6.4% 5.1%
熊本国税局 熊本、大分、宮崎、鹿児島 71,959人 3,486人 2,817人 4.8% 3.9%
沖縄国税事務所 沖縄 12,157人 942人 767人 7.7% 6.3%

地域によって申告割合や課税割合に違いが生じる原因としては、相続財産に占める土地の割合が高いことから、地域の土地の値段が大きく影響しているものと考えられます。東京都を擁する東京国税局の数字が突出して高いのもその証左であると思われます。

埼玉県を擁する関東信越国税局の数値については、全国と比べて概ね同じ水準ないしやや低いといったところです。

埼玉県の状況

さて、いよいよ埼玉県の状況をみたいと思いますが、関東信越国税局が公表している情報だけでは、県以下の単位の「申告割合」や「課税割合」は分かりません。

というのは、関東信越国税局が公表している情報のなかで、埼玉県内にある「各税務署の所轄地域ごとの『相続税申告書の提出に係る被相続人数』」は明らかにされていますが、割合で考える際に分母となる「税務署の所轄地域ごとの『被相続人数(死亡者数)』」が明らかにされていないからです。

そこで、筆者は独自に算出を試みました。埼玉県(埼玉県保健医療部保健医療政策課)が公表している「埼玉県の人口動態概況」から市町村別の死亡者数を抜き出し、埼玉県内の税務署の所轄地域の市区町村に当てはめ、埼玉県内の税務署所轄地域ごとの「被相続人数(死亡者数)」を集計することで、埼玉県内の税務署所轄地域ごとの「申告割合」「課税割合」および埼玉県全体のそれらを算出できました。

平成30年(2018年)分の結果は次のとおりです。

税務署 所轄 被相続人数(死亡者数) 相続税申告書の提出に係る被相続人数 うち相続税額があるもの 申告
割合
課税
割合
川越 川越市、富士見市、坂戸市、鶴ケ島市、日高市、ふじみ野市、入間郡 8,272人 1,114人 834人 13.5% 10.1%
熊谷 熊谷市、深谷市、大里郡 4,172人 393人 314人 9.4% 7.5%
川口、西川口 草加市、川口市、蕨市、戸田市 8,907人 1,246人 942人 14.0% 10.6%
浦和 さいたま市のうち中央区・桜区・浦和区・南区・緑区 4,993人 1,015人 760人 20.3% 15.2%
大宮 さいたま市のうち西区・北区・大宮区・見沼区 4,503人 828人 606人 18.4% 13.5%
行田 行田市、加須市、羽生市 2,769人 272人 223人 9.8% 8.1%
秩父 秩父市、秩父郡 1,564人 115人 91人 7.4% 5.8%
所沢 所沢市、飯能市、狭山市、入間市 6,749人 1,017人 789人 15.1% 11.7%
本庄 本庄市、児玉郡 1,664人 128人 95人 7.7% 5.7%
東松山 東松山市、比企郡 2,439人 241人 197人 9.9% 8.1%
春日部 さいたま市岩槻区、春日部市、久喜市、蓮田市、幸手市、白岡市、杉戸町、南埼玉郡 7,584人 855人 683人 11.3% 9.0%
上尾 鴻巣市、上尾市、桶川市、北本市、伊奈町 4,856人 612人 503人 12.6% 10.4%
越谷 越谷市、八潮市、三郷市、吉川市、松伏町 5,722人 687人 516人 12.0% 9.0%
朝霞 朝霞市、志木市、和光市、新座市 3,532人 489人 377人 13.8% 10.7%
埼玉県 67,726人 9,012人 6,930人 13.3% 10.2%

こうして見ると、埼玉県の申告割合・課税割合は、関東信越国税局や全国平均よりも高いことが分かります。

また、埼玉県のなかでも地域によって偏りがあることが見て取れます。もっとも割合が高いのは、県庁所在地であるさいたま市の浦和税務署所轄地域です。全国平均の2倍近くもあることに驚かされます。これに同じくさいたま市の大宮税務署所轄地域が浦和よりやや下回る水準で追随し、さらに所沢、川口、朝霞、川越など県南の地域が続く格好になっています。

まとめ

日本全国で見れば相続税に関係あるのは10人に1人くらいであって、ほとんどの人には相続税はまだまだ関係ないと思われてしまいがちです。しかし、地域によっては相続税は意外と身近な税金なのかもしれません。ご心配のある方は、税理士へ是非ご相談ください。