税務六法

自分のこと

この世には税務専門の法令集が存在します。税務六法といいます。

この記事では、普通の人にはまず馴染みがないであろう税務六法について紹介するとともに、ひとりの実務家である筆者の税務六法との関わりついても触れたいと思います。

税務六法とは

一般的な「六法」

一般的に「六法」とは、日本の基本的な法律である憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法の6つの法典を指す言葉であり、そこから転じて法令集のことも六法と呼びます。

その一般的な法令集としての六法には、上記の基本的な6つの法令のほか様々な法令が載っています。

ここに税金に関するものが載っているかというと、有斐閣から出版されている「ポケット六法」にはまったく載っておらず、「六法全書」には 税金関連のうち主要なものについて載せているようです。

税務専門の「税務六法」

「税務六法」は税務専門の法令集です。

名前に六法とあるものの、憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法は載っていません。

載っているのは、国税通則法・国税徴収法・所得税法・法人税法・相続税法・消費税法etc. といった税金関連の法律ばかりです。

六法全書には載っていなかったマイナーな税法たちや、施行令・施行規則もしっかり載っています。

また、税金の世界では法令とならんで通達も非常に重要であるため、税務六法では税法に関する様々な通達もカバーしています。

このように税務に特化しているのが税務六法です。

筆者と税務六法

出会い

筆者は2つの税理士事務所に勤務したのちに独立して現在に至ってます。

そんな筆者が税務六法と出会ったのは最初に勤務した事務所でした。

必需品

その事務所では、税務六法は必携でした。

職員ひとりひとりが税務六法を所持するよう指導され、購入代金は事務所が負担してくれました。

そして日々の仕事においても、論点の検討をする際には関連する条文と通達を必ず一通り読んでから臨むよう、クライアントに説明する際には条文や通達で根拠を示すよう、厳しく指導されました。

新日本法規 と ぎょうせい

税務六法を出版している会社は2つあります。
新日本法規出版株式会社」と「株式会社ぎょうせい」です。(新日本法規、ぎょうせい、と略させていただきます)

新日本法規からは「実務 税務六法」、ぎょうせいからは「税務六法」というタイトルで毎年出版されています。

どちらも全部で数千ページにわたるボリュームがあり、お値段も相応にかかりますので、ひとりで両方同時に購入することはまずありえません。どちらかを選ぶことになります。

筆者が勤務していた当時、その事務所のなかでは、新日本法規派とぎょうせい派がほぼ拮抗してました。

新日本法規派に聴くと、装丁の良さや読みやすさを気に入っているとの声が多かったように記憶しています。ぎょうせい派の方は、本法の条文ごとに関連政省令を一覧で掲載していて使い勝手が良いとの意見が多かったです。

筆者はというと、どちらにするか迷いましたが、たまたま配属先の席の周りにいた先輩たちにぎょうせい派が多かったので、感化されてぎょうせい派になりました。

文化の違い

その後、2つめの事務所に転職して驚きました。

誰も使っていない!?

誰も税務六法を持っていなかったからです。

「かさばるので事務所で共用にしているのかな」と思い、事務所内の共用の本棚を見に行くがパッと見では見当たらず。よく探すと、本棚下段の引き出しの中で、税務六法が外箱に収納された状態で鎮座しているのを見つけました。

手に取って箱から出し、ページに指をかけるとパリッとした新品の感触でめくれました。
ここでは税務六法を使う文化がないことが判明した瞬間でした。

なくても仕事はすすんでいく

前の事務所とあまりにも違うため、仕事で税務六法を使わなくても大丈夫なのかと当初は不安にもなりました。しかし、その不安は杞憂でした。

税務六法で法令等を直接見ないからといって何も当て推量で仕事をしているわけでは決してなく、税法の解釈などに関しては実務書や解説書を熱心に読むことで対処するのがその事務所の流儀でした。

実際にその事務所の税務サービスの品質は非常に高い水準にあった、と筆者は当時も今も確信しています。

独立後

ひとつめの事務所は税務六法を使う文化で、ふたつめの事務所は税務六法を使わない文化でした。

その後、独立してからは税務六法を使うも使わないも自分次第になりました。

やはり必要

独立直後はお金の余裕はあまりなかったものの、ためらいなく税務六法の最新版を購入しました。

三つ子の魂百までと言いますが、最初に体験したことの影響が強く残るのか、どうも筆者は条文を直接確認しないと安心できない性分に染まっていたようです。

独立後は税務六法を使って確認しながら仕事をするスタイルになりました。

「e-Gov法令検索」の登場

独立後「e-Gov法令検索」が登場し、筆者と税務六法の関係に大きな転機が訪れました。

「e-Gov(イーガブ)」とは、総務省行政管理局が運営しているポータルサイトのことです。

そのe-Govのなかで、日本の法令の検索・閲覧システムが「e-Gov法令検索」という名称で2017年から運営開始になりました。

e-Gov法令検索
電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。

税務六法に載っている税務に関する様々な法令については、ここで検索・閲覧することができます。

時折ページ更新がやや重いと感じることがあるものの、総合的な使い勝手はかなり良いです。デジタルなので条文内の文言を検索機能で探せたりコピー&ペーストできたりするのは大きな利点です。税法は改正が頻繁に行われますが、ここでならば最新の改正後の条文を見れるという安心感もあります。これが無料で使えるというのはとてもありがたいことです。

条文を確認したい性分の筆者は長年にわたり税務六法を愛用してきたわけなのですが、e-Gov法令検索を知ってからは、e-Gov法令検索を使う機会が着実に増え、その分だけ税務六法を使う機会は減りました。

次第に税務六法を購入する必要はないのかもしれないと思うようになりました。

それでも手放すことはできない

それではもう思い切って税務六法とお別れするかといえば、それはできませんでした。

第一にどうにも忍びない。筆者の税理士としての原点のひとつがここにある気がしてならないのです。

第ニに紙媒体の実用性はあなどれない。記憶に残りやすいなどなど、紙媒体には電子媒体にはない実用性があるものです。

そこで筆者は考えた挙句、税務六法を3年に1度買い替えることにしました。

筆者はあと20年くらいはこの仕事を続けるつもりでいるのですが、その間に税務六法の有り様が自分にとって、あるいはこの業界にとって、どう変化していくのか、できる限り見届けたいものです。

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