ペットの相続税における取り扱い

相続税

お亡くなりになった方がペットを飼っていた場合、そのペットは相続税にどう影響するのか。筆者の考えをまとめました。

法的には「物」の扱い

民法において動物は基本的に「物」に該当すると解釈されますので、動物であるペットは「物」の扱いになります。生命ある存在を「物」とすることに抵抗を感じる向きはあるものの、法的には「ペットは飼い主が所有する『物』である」という形で整理されます。

したがって、理論上ペットの飼い主(=所有者)が亡くなった場合には、そのペットは亡くなった人の遺産に含まれることから、ペットは相続税の対象になりえます

ペットの財産評価

財産評価基本通達

相続税における財産の評価方法は、財産評価基本通達の規定に従います。

財産評価基本通達のなかに「牛馬等」の評価方法として次の規定があります。

134 牛、馬、犬、鳥、魚等(以下「牛馬等」という。)の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。

(1) 牛馬等の販売業者が販売の目的をもって有するものの価額は、前項の定めによって評価する。

(2) (1)に掲げるもの以外のものの価額は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。

筆者注) (1)の「前項の定め」とは、「133 たな卸商品等の評価」のことです。

人が所有する牛馬等の動物には、販売用・事業用・愛玩用などがありえます。

この通達では、販売用のものは(1)、それ以外のものは(2)で評価するとしています。

ご家庭で飼われているペットは愛玩用の動物なので(2)の方で評価します。つまりペットは「売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価」します。簡単な言葉で言い換えると、多少語弊があるかもしれませんが「換金したらいくらになりそうか」で評価するということです。

基本的に一般人はペットを売れない

ペットの販売には厳しい法規制がかけられています。
愛玩用の哺乳類・爬虫類・鳥類の販売には動物愛護管理法による「第一種動物取扱業者」の登録が必要です。無登録で販売すれば100万円以下の罰金です。

つまり、哺乳類・爬虫類・鳥類に属するペットを売ることができるのは、いわゆるペットショップのような専門業者だけで、このようなペットを一般人である飼い主が売る(換金する)ことは困難です。犬・猫・亀・インコなど人気のあるほとんどのペットはこれにあてはまります。

また、魚類・両生類・昆虫などは比較的規制が緩いため、買い取りをしてくれる業者もいらっしゃいますが、当然ながら慈善事業ではありませんので、条件があわないと買い取りしてくれません

このように飼い主にとってそのペットを売ることが難しい場合には、評価額はゼロ円であると解するよりほかないと考えられます。

そして、評価額ゼロ円ならば税額に全く影響しないので、相続税申告書に載せる必要はないと考えます。

売ることができる場合

そのペットが魚類・両生類・昆虫などであり、かつ買い手の買取条件に適うようなのであれば、買取見積額を出していただいてそれをもって評価額としてよいと考えます。