個人向け国債の相続税評価

財産評価

個人向け国債は、個人でも購入できる国債のことです。低金利下の安全な資産運用先として高齢者にも人気があり、遺産のなかに個人向け国債があることは珍しくありません。

そこで、個人向け国債の相続税評価について解説します。

相続税評価額の計算方法

算式

個人向け国債の相続税評価額は、次の算式で計算します。

額面金額 + 経過利子相当額 - 中途換金調整額 

なぜこの算式の金額なのかというと、この算式で計算した金額が個人向け国債を中途換金した場合に受け取れる金額だからです。

用語

「経過利子相当額」は、未収利息の日割分のことです。

「中途換金調整額」は、買取金額の減額要素であり、要は一種のペナルティです。

発行から1年以上経過している場合には、既にに受け取っている利子のうち直近2回分に相当する金額が「中途換金調整額」になります。国債の利子は半年ごとに20.315%税率で源泉徴収されたあとの金額で受け取りますので、ちょうど利子1年分の手取額が帳消しになるわけです。

なお、発行から1年未満で1回しか利子を受け取っていない場合には、その1回分の手取額と先述の経過利子相当額の合計額が「中途換金調整額」になります。発行から半年未満で1度も利子を受け取っていない場合には、経過利子相当額が「中途換金調整額」になります。

財務省の公式サイトで試算可能

算式は分かったが細かい計算は不安…という方には、財務省公式サイトのなかにある「中途換金シミュレーション」がオススメです。

個人向け国債 : 財務省
財務省の個人向け国債のシミュレーションが...

必要事項を入力すれば素早く計算結果を表示してくれます。計算過程もしっかり教えてくれる優れものです。

個人向け国債の中途換金は法令で担保されている

上述の評価方法が行われる背景としては、個人向け国債の中途換金のルールが法令で決まっていることが大きいです。(「個人向け国債の発行等に関する省令」の第6条、第7条)

いつでも換金できる

個人向け国債を償還前に中途換金したくなった場合には、証券会社などの取扱機関に対して買取請求をすることができます。

個人向け国債の買取請求があったら、証券会社などの取扱機関は遅滞なくこれを買い取ります。

この買取請求ができる時期は、原則的にはその国債の発行から1年経過後からとされていますが、例外的に個人向け国債を相続により取得した相続人ならば、発行から1年経過する前であっても ―― つまりいつでも ―― 中途換金することができます。

金額も法令で決まっている

個人向け国債を証券会社などの取扱機関が買い取る際の金額は、先述した中途換金額の算式で計算した額になります。このことも法令で決まっています。

財産評価基本通達との関係

上記の評価方法は合理的であり、かつ実務的に定着した方法です。

しかし、この評価方法は財産評価基本通達には載っていません。実はこれは通達によらない評価方法なのです。

財産評価基本通達197-2「利付公社債の評価」

財産評価基本通達には、197-2で「利付公社債の評価」という項が設けられています。その内容を大雑把に紹介すると、次の(1)~(3)の区分に従ってそれぞれの算式で評価することとしています。

(1) 金融商品取引所に上場されている利付公社債

 金融商品取引所の公表する課税時期の最終価額
 + 源泉所得税相当額控除後の既経過利息の額

(2) 日本証券業協会において売買参考統計値が公表される銘柄として選定された利付公社債

 日本証券業協会から公表された課税時期の平均値
 + 源泉所得税相当額控除後の既経過利息の額

(3) (1)(2)以外の利付公社債

 発行価額
 + 源泉所得税相当額控除後の既経過利息の額

ご覧のように、この通達には先述した「個人向け国債」の中途換金額による評価の算式は見当たりません。

「個人向け国債」は「利付公社債」に含まれるように考えられますので、「個人向け国債」を評価する際に本当にこの通達に従わないで別の評価方法をしても大丈夫なのか、という疑義を感じなくもありません。

国税庁の見解

国税庁ホームページの質疑応答事例のなかで、個人向け国債の評価について回答しています。

個人向け国債の評価|国税庁

この回答のなかで、結論として、下記算式で計算した中途換金額で評価するとしています。「評価しても差し支えない」ではなく、「評価する」ときっぱり断言しています。

額面金額 + 経過利子相当額 - 中途換金調整額 

つまり、通達によらない評価方法ではあるものの、国税庁のお墨付きがありますので、中途換金額で評価をしたことで税務署からクレームがつく可能性はないです。

そろそろ通達に取り入れた方が

このように通達によらない評価方法を実務的に問題なく使えるわけなのですが、筆者のような小心者の実務家の胸には一抹の気持ち悪さが残ります。

いつかどこかのタイミングで、個人向け国債の評価を中途換金額で評価する旨を正式に通達に取り入れてもらえればと願います。

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