成年後見人が成年被後見人の相続税申告を代理する場合における申告書の書き方

相続税

現代の高齢化社会にあっては、成年被後見人が相続により財産を取得し相続税申告をする場合もありえます。

その場合、成年被後見人は原則として単独で法律行為ができないため、成年後見人が代理人となって成年被後見人の税務申告をします。 この成年後見人が代理人となるという特殊性から、申告書の書き方が通常とは少し異なることになります。

第1表の記載

相続税申告書第1表上部

氏名

氏名欄には、両方の氏名を記載します。

例えば、
本人である成年被後見人の氏名が「国税一郎」で、
代理人である成年後見人の氏名が「税務幸子」だとします。

具体的な書き方として、日本税理士会連合会は次のような記載にすることを薦めています。

 国税一郎 成年後見人 税務幸子

1行で書くのが苦しければ2行に分けて書いても問題ないと思われます。

 国税一郎
 成年後見人 税務幸子

なお、令和3年からは不要となった押印ですが、押すのであれば代理人である成年後見人(税務幸子さん)の印を脇に押すことになります。

住所

住所欄でも、成年被後見人と成年後見人の両方の住所を記載します。

かなり狭い欄なので、場合によっては頑張って小さい字にするなどの努力・工夫が要りそうです。

なお、電話番号については、税法に明確な規定がないので正しい記載方法については何とも言えません。実務的な観点からは代理人である成年後見人のもののみで足りるように考えられますが、余裕があれば住所に倣って両方記載するのが無難かもしれません。

個人番号(マイナンバー)

個人番号(マイナンバー)は、成年被後見人本人の個人番号のみを記載します。

ただし、日本に住民票がないなどの理由から個人番号がない場合には、当然ながら書きようがないので、個人番号の記載を要しません。

代理の権限を有することを書面で証明

登記事項証明書

代理人によって申告をする場合には、その代理人は代理の権限を有することを書面で証明された人でなければなりません。

成年後見に関しては、成年被後見人とその成年後見人が記載された「登記事項証明書」という書類を法務局で発行してもらえます。この書類で代理の権限を有することを証明できます。

申告書への添付

この代理権限を有することの証明書類は、必ず申告書に添付しなければならないかというと、そういった決まりはありません。

しかし、こうした証明書類を申告書に添付しておけば、「きちんと確認しながらルールに則って手続をしています」という姿勢を示せますので、任意であっても添付する価値があると思われます。

根拠規定

より厳密に押さえておきたい方のために、根拠規定について紹介します。

代理人がいる場合の申告方法について相続税法には特段の規定がないため、国税通則法124条1項に従うことになります。

国税通則法 第百二十四条

国税に関する法律に基づき税務署長その他の行政機関の長又はその職員に申告書、申請書、届出書、調書その他の書類(以下この条において「税務書類」という。)を提出する者は
当該税務書類に
その
氏名(法人については、名称。以下この項において同じ。)、
住所又は居所
 及び
番号(番号を有しない者にあつては、その氏名及び住所又は居所とし、税務書類のうち個人番号の記載を要しない書類(納税申告書及び調書を除く。)として財務省令で定める書類については、当該書類を提出する者の氏名及び住所又は居所とする。)
を記載しなければならない

この場合において、その者が法人であるとき、納税管理人若しくは代理人(代理の権限を有することを書面で証明した者に限る。以下この条において同じ。)によつて当該税務書類を提出するとき、又は不服申立人が総代を通じて当該税務書類を提出するときは、

その代表者(人格のない社団等の管理人を含む。次項において同じ。)、納税管理人若しくは代理人又は総代
氏名
 及び
住所又は居所
をあわせて記載しなければならない

 (改行・下線はこの記事の筆者によるものです)

特別代理人(または後見監督人)が選任されている場合

特別代理人の選任

遺産分割協議において、成年被後見人と成年後見人とがともに相続人であると、成年後見人が利益相反行為をするおそれがあります。端的に言えば、成年後見人が自分自身の取り分を多くしたいがために、本来は代理人として成年被後見人の取り分を適切に確保するよう努めなければならないはずなのに、わざと成年被後見人の取り分を少なくするおそれがある、という意味です。利益相反のおそれがある状態では公正な代理権の行使が期待できません

そこで、公正な遺産分割協議のために、誰か別の人に成年被後見人の代理人になってもらうべく、家庭裁判所への申立てを経て特別代理人が選任されます。ただし、後見監督人が既に選任されている場合には、特別代理人の選任はせずに、後見監督人が代理人になります。

税務申告の代理をするのは成年後見人

こうした特別代理人(または後見監督人)がいる場合には、彼らが成年被後見人の代理人として遺産分割協議を行い、遺産分割協議書に署名押印をすることとなります。

この流れで、相続税申告書についても、特別代理人(または後見監督人)の氏名住所を併記するのかというと、そうではありません。

特別代理人(または後見監督人)は、成年後見人が代理人であると利益相反行為のおそれがある遺産分割協議という特別な場面限定の代理人です。

税務申告をする行為については、成年後見人が代理人であっても基本的に利益相反はないものと解されるため、成年後見人が代理人となって申告を行います

まとめ

  記載
氏名 住所 番号
成年被後見人
(本人)
 
成年後見人
(代理人)
  代理の権限を有することを書面で証明した者に限る

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