澤田税理士事務所の近くには、氷川神社という大きな神社があります。大宮の地名の由来にもなっている地域に深く根差した神社です。
この氷川神社から4キロくらい南東に中山神社という神社が、その中山神社からさらに4キロくらい南東に氷川女体神社という神社があります。氷川神社と氷川女体神社のちょうど中間に中山神社があり、この3つが一直線に並んでいます。
冒頭の地図のAが氷川神社、Bが中山神社、Cが氷川女体神社のおおよその位置です。
氷川神社は須佐之男命(スサノオノミコト)を祭り、氷川女体神社は須佐之男命の妻である奇稲田姫命(クシナダヒメノミコト)を祭り、中山神社では須佐之男命と奇稲田姫命の子である大国主命(オオクニヌシノミコト)を祭っています。夫婦の神様の間に子の神様がいる格好になっており、主祭神の家族関係を意図してこの3つの神社がそれぞれの位置に建てられたのであろうことを思わせます。
さらに、この3つの神社をとおる直線には、別の意味があると言われています。Wikipediaの中山神社のページに次の記述があります。
当社は氷川神社と氷川女体神社の直線上にあり、広大な見沼を挟んでちょうど中間に位置する。太陽は夏至に西北西の氷川神社に沈み、冬至には東南東の氷川女体神社から昇るという、稲作で重要な暦を正確に把握するための意図的な配置となっている。
本当に氷川神社の並びが冬至や夏至と関係するのか、ド素人ながら検証してみました。
冬至の日の出の方角
北緯35度における冬至の日の出の方位角は、約119度。 真北を0度、真東を90度、真南を180度……といった具合ですので、119度というのは真東よりも29度ほど南よりということになります。
3つの神社を通る直線の方位角が119度になるか、あるいはその平面上の傾きが29度になるかを検証しました。
なお、夏至の日の入りの方位は冬至の日の出の180度反対側に原理上必ずなることから、冬至の日の出に関する検証ができれば同時に夏至の日の入り関する検証にもなりますので、冬至の日の出の方位についての検証のみをしました。
検証その1
各神社の緯度経度がWikipediaに載っていましたので、これを利用します。
緯度 | 経度 | |
---|---|---|
氷川神社 (A) | 北緯35度55分00.30秒 | 東経139度37分47.04秒 |
中山神社(B) | 北緯35度54分00.48秒 | 東経139度39分50.16秒 |
氷川女体神社(C) | 北緯35度53分12.89秒 | 東経139度41分37.56秒 |
まず、それぞれの緯度経度の差を出し、次に、tanθ=tan(緯度の差/経度の差)となるときのθの値に相当する角度を求めました。θの算出にはExcelの「ATAN2」と「DEGREES」の関数を用いました。
この結果が29度に近いかというと……
緯度の差(秒換算) | 経度の差(秒換算) | θ | |
---|---|---|---|
A-B | 59.82秒 | 123.12秒 | 25.91度 |
B-C | 47.59秒 | 107.40秒 | 23.90度 |
A-C | 107.41秒 | 230.52秒 | 24.98度 |
アレ? オカシイナー。29度ニナラナイゾ・・・。
検証その2
先ほどの検証には間違い、見落としがありました。経線の間隔が緯度によって異なるなどの特性、要は地球が丸いことを考慮にいれていなかったのです。
それでは地球の丸さを考慮にいれるためには一体どうすればよいのか? 色々調べていくうちに「平面直角座標」の存在に行きつきました。「平面直角座標」系とは、Wikipediaによると「歪みが一定限度に収まるよう狭い範囲だけ投影を行い、その範囲内だけで用いる平面上の直交座標系」とのこと。
そして、国土地理院のホームページ内に、緯度経度を平面直角座標に換算する便利なページがあるのを見つけました。
これを用いて判明した3つの神社の「平面直角座標」は次のとおりです。
X座標(縦) | Y座標(横) | |
---|---|---|
氷川神社 (A) | -9,217.1976 m | -18,374.7758 m |
中山神社(B) | -11,066.6499 m | -15,291.4403 m |
氷川女体神社(C) | -12,537.5525 m | -12,600.5305 m |
検証1と同様に、まず、縦横それぞれの距離を出し、次に、tanθ=tan(縦の距離/横の距離)となるときのθの値に相当する角度を求めました。
縦の距離 | 横の距離 | θ | |
---|---|---|---|
A-B | 1,849.4523 m | 3,083.3355 m | 30.96 度 |
B-C | 1,470.9026 m | 2,690.9098 m | 28.66度 |
A-C | 3,320.3549 m | 5,774.2453 m | 29.90度 |
やりました。概ね29度です。
検証その3
検証2でやり遂げた感を満喫した直後、国土地理院のホームページ内の「平面直角座標」に換算するページのすぐ隣に、「距離と方位角の計算」のページがあるのを見つけました。「距離と方位角の計算」のページでは、2地点の緯度経度からその2点間の距離と方位角を求められるとのこと。はじめからこちらを使えば手っ取り早かったみたいです。
気を取り直して、「距離と方位角の計算」を使ってみた結果は次のとおりでした。
方位角 | |
---|---|
A-B | 120度50分12.63秒 |
B-C | 118度33分45.14秒 |
A-C | 119度46分50.62秒 |
やりました。概ね119度です。検証2と僅かにずれがある理由は分かりませんでしたが、満足する結果が得られました。
まとめ
素人の私が理解する範囲においてですが、氷川神社、中山神社、氷川女体神社を通る直線の方角は、冬至の日の出(あるいは夏至の日の入り)の方角と一致することが確かめられました。
一説によるとストーンヘンジやピラミッドは太陽の動きと関係がある造りになっていると言われます。これら著名な古代遺跡と同じように、我が町の神社にも太陽の動きとの関係が存在していると思うと少しワクワクします。