生前贈与加算の対象者は「相続または遺贈により財産を取得した者」と覚えておきましょう。
生前贈与加算の対象者を「相続人」と覚えてしまっていると、間違いを起こす可能性があります。
条文
生前贈与加算の対象者が「相続または遺贈により財産を取得した者」であることは、条文に明記されています。
生前贈与加算を規定している相続税法19条1項の前段を見てみましょう。
なお、読みやすくするために括弧書きを省略しています。
相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前三年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産(括弧書き省略)の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし、
相続人は必ずしも相続により財産を取得するとは限らない
相続により財産を取得することが出来るのは相続人です。
しかし、相続人だからといって必ずしも相続により財産を取得するとは限りません。遺産分割協議の結果、ある相続人が財産を全く取得しないこともありえます。
相続で財産を取得しなかった相続人が、その相続の開始前三年以内に被相続人から贈与により財産を取得したことがあったとしても、その贈与財産について相続税の生前贈与加算をする必要はありません。
相続人でなくても遺贈により財産を取得することがある
遺言があれば相続人でなくても遺贈により財産を取得させることができます。
遺贈で財産を取得した人は、相続人でなかったとしても、相続開始前三年以内に被相続人から贈与により財産を取得したことがあった場合には、その贈与財産について相続税の生前贈与加算をする必要が生じます。
「みなし相続」「みなし遺贈」にも注意
上記の「相続または遺贈により財産を取得した者」のなかの「相続」と「遺贈」には、民法上の「相続」と「遺贈」だけでなく、相続税法上の「みなし相続」と「みなし遺贈」も含まれるので注意が必要です。
例えば、ある人が相続税対策として孫に毎年少しずつ生前贈与を続けるいっぽうで、その孫を受取人とする生命保険契約に加入していたらどうなるか。
その人が亡くなり孫に生命保険金が支払われると、相続税上は、孫は生命保険金を遺贈により取得したものとみなされます。その結果、孫は遺贈により財産を取得した者として相続開始3年以内のその人からの贈与について生前贈与加算をする必要が生じます。
この記事では相続時精算課税に関する論点は割愛しています。