令和2年度1月から6月までの相続税路線価の見直しは行われないことに

財産評価
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令和2年度の相続税路線価は、新型コロナウイルス感染症の影響により見直しがあるかもしれないとの観測がありました。どのような対応がなされるか注目されていたところ、7月1日の路線価発表から約4か月後の10月28日、国税庁から路線価の補正に関する発表が遂にありました。

令和2年分路線価発表時の異例のアナウンス

毎年7月1日に相続税路線価は発表されますが、令和2年の発表では次のような異例の注意書きが付された発表となっていました。

(注) 今後、国土交通省が発表する都道府県地価調査(7月1日時点の地価を例年9月頃に公開)の状況などにより、広範な地域で大幅な地価下落が確認された場合などには、納税者の皆様の申告の便宜を図る方法を幅広く検討いたします。

国税庁HP

相続税路線価は、その年の1月1日を基準時点として設定され、その年度を通じて評価に用いられます。

令和2年においては、2月くらいから新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に深刻視されるようになりました。1月1日を基準日とした路線価は新型コロナウイルス感染症の影響が織り込まれていません。このことに国税庁が問題意識を持ったがゆえに、上記の注書きを付した発表をしたものと推察されます。

10月28日の国税庁発表

10月28日に、その国税庁の対応について遂に発表がありました。

下に全文の引用を載せますが、要は、6月までの分は路線価の補正はしない、との結論になりました。その理由は、国税庁独自の地価調査をしたが路線価が時価を上回るほどの大幅な下落は確認できなかったため、とされています。

その国税庁が行った地価調査の内容について新聞報道がありました。それによると、大幅な下落として、1月から6月までに東京都、愛知県、大阪府のなかの6地域で15%以上の下落があり、うち最大の下落率は19%だったとのことです。

確かに理論上、路線価は基準時点の時価の80%を目途として設定していることから、時価の下落率が20%を超えない限りには路線価が時価を上回る事態にはなりません

6月までに限っては時価の下落はあったがその下落した時価よりも路線価の方がまだ低い、したがって専門用語でいうところの「評価の安全性」はまだ保たれている――こうした思考が今回の国税庁の判断の根底にあるようにうかがえます。

評価の安全性の原則

大原則として相続税法では財産の評価は時価によるものとされています(同法22条)が、具体的な評価方法に関する規定は財産評価基本通達に委ねられています。

財産評価基本通達は、膨大な量の財産評価を画一的一律的に処理しようとするものであることから、その評価方法にはある程度精密さに目をつぶった簡便性が求められます。つまり、財産評価基本通達に基づいて画一的簡便的に処理され算出された評価額は、正確な時価とズレが生じてしまう可能性があります。

ズレのパターンは、「評価額が時価を上回る」あるいは「評価額が時価を下回る」の2種類に大別されます。どちらの方がより容認しがたいかという価値判断において、財産評価基本通達では、前者の「評価額が時価を上回る」のほうが容認しがたい事態であるという立場をとっています。なぜなら、そのような事態は法律で規定した大原則たる時価を上回る水準に基づく税負担を納税者に要求する結果になってしまうからです。

そこで、財産評価基本通達では、評価額が時価以下であるようにするために、評価がやや低めになるように設計されるべきという考え方が採られることがあります。この評価額が時価を超えてしまう危険性を避けるために敢えて低めに評価しようとする原則を、「評価の安全性の原則」と言います。

10/28の国税庁発表 全文の引用

令和2年10月
国税庁

令和2年分の路線価等の補正について


令和2年分の路線価及び評価倍率を記載した路線価図等を7月1日(水)に国税庁ホームページで公開しました。
路線価等は、1月1日を評価時点として、1年間の地価変動などを考慮し、地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度を目途に評価しています。
なお、路線価等の公開時に、次のとおり公表しました。

今後、国土交通省が発表する都道府県地価調査(7月1日時点の地価を例年9月頃に公開)の状況などにより、広範な地域で大幅な地価下落が確認された場合などには、納税者の皆様の申告の便宜を図る方法を幅広く検討いたします。


国土交通省より発表された都道府県地価調査によると、令和元年7月以降1年間の地価について、全国平均では、全用途平均は0.6%の下落、また、令和2年1月以降の半年間地価公示との共通地点)の全国平均の地価変動率は、住宅地は0.4%の下落、商業地は1.4%の下落とされております。


加えて、当庁が行った調査(外部専門家に委託)でも、1月から6月までの間に、相続等(注1)により取得した土地等の路線価等が時価を上回る(大幅な地価下落)状況は確認できませんでしたので、1月から6月までの相続等については、路線価等の補正は行いません(注2・3)。

(注)
1 「相続等」とは、相続、遺贈又は贈与をいいます。
2 納税者の方が不動産鑑定士による鑑定評価額などに基づき、相続等により土地等を取得した時の時価により評価することもできます。
3 7月から12月まで(7月から12月までの相続等適用分)に、広範な地域で大幅な地価下落が確認された場合の路線価等を補正するなどの対応については、今後の地価動向の状況を踏まえ、後日、改めてお知らせします。

https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0020010-042.pdf

今後どうなるか

7月以降も地価下落が継続していれば、令和2年内に下落率が20%を超えるところが出現する事態も十分考えられます。そのときこそは、納税者のために何らかの具体的な対応があるものと期待します。

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