令和2年分確定申告の申告期限延長

その他の税目

所得税の確定申告の期限は通常3月15日ですが、令和2年分について4月15日まで延長されました。

この延長と法律との関係について解説します。

報道発表

令和3年2月2日付けで、申告所得税・贈与税・(個人事業者の)消費税の申告期限を令和3年4月15日まで延長する旨の報道発表がありました。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kansensho/pdf/0021002-018_1.pdf

法的根拠

国税通則法

日本は法治国家なので、税金に関することは法律に基づいて運用されます。

今回の延長は、国税通則法第11条および国税通則法施行令第3条第2項に基づいています。

国税通則法 第11条 
国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から二月以内に限り、当該期限を延長することができる

国税通則法施行令 第3条第2項
国税庁長官は、災害その他やむを得ない理由により、法第十一条に規定する期限までに同条に規定する行為をすべき者(前項の規定の適用がある者を除く。)であつて当該期限までに当該行為のうち特定の税目に係る国税に関する法律又は情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)第六条第一項(電子情報処理組織による申請等)の規定により電子情報処理組織を使用して行う申告その他の特定の税目に係る特定の行為をすることができないと認める者(以下この項において「対象者」という。)が多数に上ると認める場合には、対象者の範囲及び期日を指定して当該期限を延長するものとする。

国税庁告示

国税通則法施行令第3条第2項で、国税庁長官が対象者の範囲および期日を指定する旨が見て取れます。この指定は、国税庁告示の形式でなされます

今回の延長についても、下のリンク先の文書にあるとおり国税庁告示がなされています。

https://www.nta.go.jp/law/kokuji/pdf/0021002-058.pdf

報道発表だけでは分からないことも

この告示文書には報道発表には明示されていなかった情報が含まれています。それは延長の対象となるのが「その期限が令和3年2月2日から同年4月14日までの間に到来するもの」とされている点です。

例えば、令和2年10月25日に亡くなられた方の準確定申告の期限は、本来ならば4か月後の令和3年2月25日ですが、これは「その期限が令和3年2月2日から同年4月14日までの間に到来するもの」に該当しますので、この方の準確定申告の申告期限は令和3年4月15日に延長されることになります。

こうした応用的な適用関係については報道発表を読んだだけでは分かりません。

そうした意味では国税庁はもっとこの告示文書を前面に推しだしてアピールしたほうが良さそうにも思いますが、そうしていないのは以下に述べるような苦しい運用があるためではないかと筆者は考えています。

垣間見える苦しい運用

4月15日に期限を延ばすにあたり、国税通則法第11条および国税通則法施行令第3条第2項を根拠にしていると述べましたが、無理やり適用した感がぬぐえません。

やむを得ない理由がやんだのか

国税通則法第11条では、災害その他やむを得ない理由のやんだ日から二月以内に限り延長できる、となっています。

今回の延長についての「災害その他やむを得ない理由」が確定申告会場における新型コロナウイルス感染症に関することなのだとしたら、延長をするためには、延長期日の2か月前以降の時点で、確定申告会場で新型コロナウイルス感染症の心配をしなくてよくなるような、コロナ禍終息に向かう何らかの改善が起きていなければならないはずです。

ところが現実には当時も今もコロナ禍は依然として続いており、「災害その他やむを得ない理由」がやんではいないように見受けられます。

国税庁告示の日付

報道発表の日付が令和3年2月2日で、国税庁告示の日付が令和3年2月15日になっています。報道発表と同時ないし直後に国税庁告示をしてもよさそうなところです。しかし、そうすることができなかったのは、国税庁としても国税通則法第11条との整合性を少しでも保ちたかったからなのだろうと思われます。

すなわち、同法11条の書きぶりは「理由がやんだ日から2カ月以内」であって、「理由がやむと見込まれる日から2カ月以内」ではありません。つまり「理由がやんだ日」以降でなければ延長期日を指定する告示を出せない構造になっています。こうなると、延長期日を4月15日と先に決めた場合、2月2日から2月14日まで時点では告示を出すのは憚られ、最速で告示を出せるのは2月15日ということになります。

法整備を期待

この無理やり適用は今回に始まったことではありません。昨年分(令和1年分の確定申告)についても、コロナ禍を背景に国税通則法第11条および国税通則法施行令第3条第2項に基づく延長が行われました。ただし、このときはなにしろ突発事態でしたので、既存の制度を無理やり適用させるのも方便として仕方がなかったと言えましょう。

今回の令和2年分については、前回から1年間の時間があったのだから、その間に然るべき法整備があっても良かったように思われます。然るべき法整備とは、例えば、やむを得ない理由がやんでいるか否かに関わらず国税庁長官が一律に延長期日を指定できる制度の新設などです。

2度あることは3度あるともいいますので、来年以降に向けて取り掛かっていただくことに期待します。

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